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    ヨーロッパ・アルプス ベルニナ山群
2015年8月
 2015年8月23日  岡田  記
   
   
 
 ハイジハウス 
天にむけて伸びる白い稜線、ベルニナ山のビアンコグラート。

 その美しいラインをこの目でみたくて、スイス・エンガディン地方まで行ってきました。

 以下、簡略(といいつつ長いですが)ながら報告まで。

 今年のベルニナ山群は春以降の降雪が少なかったそうで、その分コンディションは良かった模様。

近郊のサンモリッツは晴天率の高いリゾートだそうだが、私が行った8月上旬は天候が安定せず、曇り&雨が続いていて登頂に不安がありました。後半天候が盛り返してくれたおかげで、希望していた山行はすべて達成することができました。

 
   
 
マインフェルトの町並み 
7/29 移動日マイエンフェルト散策

赤ルート
マイエンフェルト駅 14:0015:00 ハイジハウス 16:00 -マイエンフェルト駅 17:00

 チューリッヒではなくジュネーブ着にしたため、ベースとなるポントレジーナまで6時間かけて電車で移動。
ただの移動ではつまらないので、「アルプスの少女ハイジ」のモデルとなったというマインフェルトという町を散策。観光ルートは赤と青2ルートあるが、時間がないので短くて初心者向けの赤ルートのハイキングコースを散策。
標高2,000mにも満たない場所ですが、通年では多数の観光客が来訪するとか。
ワイン用ブドウ畑を見ながらの散策は、のんびりして癒されました。

 
   
 
ハイジやペーターが散歩した道から見た町 
7/30-31 Piz Cambrena

ディアボレッツア
2,973m 4:00 -カンブリーナ3,606m8:00-ディアボレッツア2,973m 12:30

 朝一で地元山岳ガイド協会を訪問。高所順応と手応え確認のためプレ山行を何かしたかったのですが、ハイシーズンということもあり週末は空いているガイドがいないとのこと。

ジュネーブ着が幸いして、ここにいたるまでの移動で時差ボケも解消しているので、いきなりでしたがその夜から山に行くことに決め、早々にホテルに戻って慌てて支度をすることに。

プレ山行に選んだのは、氷河歩き、3~4級の岩登り(状態により氷とのMix)、雪稜、岩稜歩きと、アルパインのすべてがコンパクトに網羅されている“アイス・ノーズ”というルート。

 
   
 
朝焼けのベルニナ山とビアンコグラート 
ADのグレードですが、想像していたよりMix部分は少なく難度も低かったと思われます。ただ登頂以降の下山ルートの岩稜はハードでした。

クライムダウンはもちろんですが、急斜面のガレ・ザレもあり、心穏やかでは歩けません。

4,000mに満たない高度でしたが、前泊のDiavolezza3,000m程度の標高だったためか眠りも浅く、体力的にきつかったです。

後半の岩稜歩きではもうヘロヘロ。「もうこれ以上は歩けない!」と叫びたいところで、一般道に合流。ギリギリセーフでした。

こんな体力でビアンコグラートに行けるのかとはなはだ不安になりましたが、ガイドの「大丈夫」との励ましで「10数時間かかってもいい」の気持ちで決行することにしました。  
   
 
Piz Cambrena登攀中の景色
8/1 レスト日 セガンティーニ美術館、モローヤ散策

 プレ山行が早まったためにレスト日。

ですが、あいにくの雨。山に上がっても眺望もないので町を散策することにしました。

セガンティーニ美術館をチラ見した後、ちょっと遠出しようと村のバスの最西となるモローヤまで足を延ばしました。

狙ったわけではありませんが、ここは地元の画家セガンティーニのゆかりの地。生前居住していたアトリエやゆかりの塔等々を見てきました。

その夜のディナーでは、隣にいた老夫婦に「明日からなら天気も大丈夫。ビアンコがんばって!」とエールを送っていただいたのが嬉しかったです。

 
   
 
Piz Cambrena頂上からの景色 
8/2 レスト日 モルテラッチ氷河散策

モルテラッチ駅
1,896m 15:15 -ボバール小屋2,495m17:00 -モルテラッチ駅1,896m 18:30

 この日もまたレスト日で、生憎の雨のスタート。

万が一を期待してコルバッチ展望台3,306mに行きましたが、やはり眺望はゼロ。
ですが、標高が低いところでは青空も見えてきたので、湖畔散策を楽しみました。

その後ビアンコグラートの足馴らしをかねて、モルテラッチ氷河まで移動してボバール小屋までトレッキング。天候が良くなってからの行動なのでスタートは15:00。日本だったらありえないスタート時間ですが、こういうスケジュールで動けるのも20:00までは明るいここスイスならでは。

とはいえ思いつきの行動なのでヘッデンも持っていないかったため心穏やかではなく、また起点となるモルテラッチ駅からホテルのあるポントレジーナ駅までは電車が1時間に1本。歩いて帰ることもできるのですが(2h程度)、明日からの本山行を考えると疲れを残したくない気持ちもあり、電車の時間も考えて何度も引き返すことが頭をよぎりました。結果としては小屋までは明るいうちに行けましたし、電車にも間に合いホッとしました。

 
   
 
Piz Cambrena 下山路の岩稜 
8/3-5本山行 Piz Bernina via Biancograt

8/3:ポントレジーナ1,805m 12:00 - チェルバ小屋2,584m 16:00

快晴に恵まれ昼前にホテル出発。

のんびりチェルバ小屋までトレッキング・・・のつもりでしたが、プレ山行でのバテぶりから超軽量化が必要と荷物を超制限したため雪山装備でのトレッキング。そのためとにかく汗ダクダクで消耗しました。

いざ歩いてみると小屋まではよく整備された道でした。大した荷物ではないのだから、短パン・Tシャツで登った方が結果としては良かったようです。(でもその重さすら持ち歩くのを躊躇するくらい、プレ山行は辛かったのです・・・)

小屋に行くまでの道中で出会う人からも「ビアンコなんて素晴らしい!!がんばって!!」とエールを送ってもらい嬉しくもあり恥ずかしくもあり。

到着した小屋は非常に快適。標高も高くないので体調も良好でのんびりできました。

料理もフルコースでめちゃくちゃ美味しかったです。日本の小屋もこうだったらいいのに・・・。

 
   
 
Piz Cambrena登頂後に見たベルニナ山群 
8/4:チェルバ小屋2,584m 3:3010:30 ベルニナ山4,048m 11:30 -マルコ・デ・ローザ小屋3,597m 13:00

翌日は3:00前に起床。簡素な朝食をとったあと3:30には出発。

先行パーティーがいましたが、ぶっちぎりのスピードでアプローチを進んでいきヘッデンの明かりもあっという間に闇の彼方へ消えていきました。

私は長丁場に備え、ガイドに「ゆっくり!ゆっくり!!」と繰り返し要望。それでも高度があがるにつれ、どんどん足や手を上げるのが辛くなってきます。

ビアンコグラートの稜線に出るまでにもそれなりの斜度の雪渓歩きがあり緊張します。個人的にはアイゼンを装着したかったのですが、ガイドの「大丈夫」の一言で断念。

結果大丈夫でしたが、自分の命のことでもあるし、ここはたとえタイムに影響しようとも強く要望すべきだったかなぁという気持ちはあります。

 
   
 
サガンティーニの絵画が展示してあるマローヤの教会
やっと着いた待望の稜線。本来なら感無量といったところなんでしょうが、安定する場所までイヤなトラバースをこなしてきたこともあり、感動よりもホッとする気持ちが強かったです。

そしてこの後に続くのは斜度350度の雪面歩き。この後も長丁場なので感動が沸き起こるのを待つ時間的な余裕などもなく先に進みますが、ただの雪稜歩きだろうと思っていたビアンコグラートは、とにかく一歩一歩足を上げることがキツく、また高度があるためうっかり下を見てしまうと恐ろしいので眺望を楽しむゆとりもありません。もったいないといえばそれまでですが、ずっと足元の一歩一歩を見続け、「早く稜線終わらないかな」と思っていたのが事実です。

また事前にガイドに聞いた話では「ほとんど歩ける」ということでしたが、前半、後半に要四つん這いのキックステップ箇所がありました。本来なら要確保では?と思いガイドに言いましたが、またもガイドは「大丈夫」とスルー。かなり緊張しました。 
   
   

 コルバッチロープウェイから見たシルス湖 
 これについては“大丈夫な技量の持ち主”と思われたのだと思ってはいますが、このあたりどこまで要求すべきかも難しいと思いました。

というのも、この日は午後からの予報がよくなかったので、早々に安全圏へ行くことを考えれば、不要な確保で時間を取られることはできるだけ避けたいところでしょうし、かといっておっかなびっくり登るのも危ないですし。結果としてガイドの「不要」判断が正解となりましたが

、滑落する人って「滑落するぞ」って思ってするわけじゃないですし・・・。

確率の問題なんでしょうが、悩ましいです。もちろん、「絶対に無理!!」と思ったらこちらもそう要求しますし、そういう場面ではそもそもそう言わなくてもガイドから確保してくるんでしょうが。

今回の私の気持ちはフォロー病の甘えなんでしょうか・・・。  
   

 モルテラッチ氷河のトレッキングコース 
そして雪稜歩きももうイヤだ・・・と思った頃にPiz Bianco(ビアンコグラート終了)に到着。ここからはアイゼンをはずした岩稜歩きとなります。

時期によっては氷が混じったミックスになるので難度が上がりますが、今回はそれがなかったのでホッとしました。

実際3~4級の岩稜歩きなので難しくはありませんでしたが、何せ高度と行動時間の長さで疲労しています。集中力を持続させ失敗しないように神経を張りつめていることにも疲れました。

難所といわれるビアンコ・シャルテを超えて登頂した後も、小屋への下山ルートには細い岩稜や雪のリッジがあり、最後まで気がぬけませんでした。

ベルニナ登頂後は小屋で一泊することになりますが、到着した小屋はイタリア領となります。

スタッフが醸し出す小屋の雰囲気も、開放的なまさに「イタリア」!

料理はこちらの小屋もフルコースで美味しかったです。 
   
 
チェルバ小屋までのトレッキングコース 
8/5:マルコ・デ・ローザ小屋3,597m 6:00 Piz Palu3,960m - ディアボレッツア・ゴンドラ駅2,978m11:30

最終日のパルー登頂は難しくないとのことで、朝ものんびりして明るくなってからの出発。

とはいえ緩い登攀にも関わらず手足を上げることがしんどく、予想以上につらかったです。

また下山で出てきた氷河歩きは特に緊張しました。ばっくり口を開けたクレバスをまたいだりジャンプしたり、アイゼンを履いての行動だけに緊張の連続でした。 

無事にディアボレッツアに着いてからは、ガイドが宣伝してくれたのか、観光にきていたみなさんに「おめでとう!」と言ってもらえてうれしかったです。

登頂の喜びだけは、一人よりも他の人たちと分かち合いたいものですね。

 
   
 
チェルバ小屋までのトレッキングコース
8/6 予備日 イタリア・ティラーノ散策

 順調にビアンコグラートを登頂でき予備日があまったので、せっかくなので世界遺産のレーティッシュ鉄道でイタリアまで足を延ばし散策しました。

ティラーノは小さな町でしたが、中世の建物も多々残ったロマンティックな雰囲気で、かつイタリアの太陽もあり、楽しい観光となりました。

 8/7 移動日 セガンティーニ小屋トレッキング:ムオタスムライユ2,456m 12:00 -セガンティーニ小屋2,731m 13:30 -アルプランガード2,330m 14:30

 山行のベースとしていたポントレジーナからジュネーブに移動する日なので、のんびり支度して電車にのるだけのつもりでしたが、いざ朝起きてみたら晴天。

この先の人生でまたここに来れるとは考えられないので心残りだったセガンティーニ小屋までのトレッキングに行ってから移動することにしました。これも、ここヨーロッパの長い昼のおかげです。日本のように17:00には下山してないと・・・な状態だったら、できない行動だったと思います。

   

 チェルバ小屋  
そうと決まればと急いで準備しましたが、スーツケースを鉄道宅配に預けるのに午前中かかってしまい、またもや「時間切れ」が頭をよぎりましたが、なんとか正午にはトレッキングを開始することができました。

途中、ルートを間違えてしまい「敗退」も視野に入れましたが、ルートが良く整備されていることと陽が長いことが背中を押してくれて、なんとか念願のセガンティーニ小屋まで行けました。

到着して周囲を見渡して驚きましたが、ここからの眺望は、滞在中に私が歩いたルートすべてが見渡せる場所。

この二週間の思い出がいっきに蘇り、感動一入でした。ここポントレジーナを訪れる方には、ぜひ行っていただきたい場所です。

予想以上の景観に満足した後、ジュネーブに移動しました。
 
   

 稜線の取付から見たビアンコグラード 
8/8 シャモニ・モンブラン観光

 ジュネーブからシャモニまでは、なんと車で一時間だとか。

アルプスも西側と東側では山様が違うというし、せっかくだからその違いをこの目で確かめたいと思い、日帰りバスツアーで行ってきました。

思いっきり観光地でわびもさびもありませんが、ロープウェイで誰でも一気に3,842mまで行けるというのは魅力です。

展望台から見るモンブランは、近すぎてあまり感動できなかったというのが正直なところですが、間近に見えるグランドジョラス等々には感動しました。

またここまでロープウェイできて、そこから登攀するクライマーの多さにもびっくり。親子三代という登山者もいて、ガイド山行が根付いているのを感じました。小さなうちからこの高度のアルパインを身近に体験しているからこそ、トップクライマーも出てくるのかなぁとか、そんなことを感じました。

最後となりますが、今回はガイド山行なので確保もバッチリしてもらって、ベストポジションで素晴らしい写真を撮れるかと若干期待していましたが、結果は逆。自分だったら立ち止まる場所でも、安定していなければスルー。写真を撮るゆとりもなくただただ上へ。

後から思ったことですが、「写真を撮ることが私の第一優先なんだ!」と最初から行っておけば、どんなに危ない場所でも確保しつつ止まってくれたのではないかと思います(だってこちらは客ですもの・・・)。

 
   
 
難所ビアンシャルテ 
とはいえ、私の第一目標は写真ではなくビアンコグラートを「この目で見て」「歩く」ことだったので、天候悪化前に抜けられるようにリードしてくれたガイドに感謝しています。

登頂後、小屋に到着してから聞いた雷鳴は、やはり恐ろしかったですし。

そういうわけで、山行をより感動的にしてくれる天候には本当に恵まれ、長い滞在中の雨はすべてレスト日だった今回の旅は、まさに山に登るために神様がセッティングしてくれたように思います。

また、手配からプラン実行までのもろもろの雑事、到着してからの町でも山でも都度都度目をみはった美しい景色、今までに経験したことのないつらい登攀のあとの登頂、そして念願だったビアンコグラートをこの目で見て登った後の号泣等々、沢山のこと経験し考える機会でもありました。
 
   

 頂上から見た下山路 
 滞在したポントレジーナ近辺のバリエーションでは、Piz Rozeq等々、他にも魅力的なルートが沢山あるようですが、トレッキングでもセガンティーニゆかりのルートだけでなく、サンモリッツを眼下にしたトレッキングやアルプスの山並みを見ながらの雄大なルート等々が多々あります。他にもマウンテンバイク、湖でのカイトやボート等々、それにクラックルートもあるようですし、ゆっくり休暇を過ごすのに本当に魅力的なエリアでした。

現地でそして日本でお世話になったみなさんに感謝します、ありがとうございました。

   
 
マルコ・デ・ローザ小屋 
 
Piz Paluから見た景色 
   
 
Piz Paluから見た景色 
 
ディアボレッツア展望台 
   
 
ティラーノの街並み 
 
 ティラーノの街並み 
   
 
セガンティーニ小屋から見た景色 
 
セガンティーニ小屋 
   
 
エギュイユ・デュ・ミディ展望台から見たグランド・ジョラス 
 
シャモニーの景色
   





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